造船所や漁業者の間には、大漁祈願や航行の安全を祈願するいろいろな神事があります。
進水式などはみなさんにも多少馴染み深い行事かもしれません。

ここでは南三陸や志津川造船鉄工所で執り行われるいくつかの神事にまつわることをご紹介します!

 

荒嶋神社

志津川造船鉄工所からも見える、すぐそばの無人島は“荒島”と言って、古くから漁業者からの信仰の対象でした。
かつては七福神の1人としてもおなじみの弁財天が祀られており、チリ地震津波の後は被災したいくつかの神社を合祀する形で、“荒嶋神社”として島のてっぺんにお社が建っています。

志津川の漁港から出港する際には必ず荒島を目にすることになりますので、漁師さんたちは島に向かって大漁と安全を祈願しながら出発していきます。
また、荒島はサンオーレそではま海水浴場と隣接していて、徒歩で渡れる無人島としても知られていますので、みなさんもぜひ荒嶋神社に足を運んでみてくださいね。

七福神まつり

荒嶋神社の弁天様のほか、七福神には恵比寿様という大漁の神様もいらっしゃいますね。

志津川造船鉄工所のちょうど山手側、現在水産加工場などが立ち並ぶエリアはかつて本浜地区と呼ばれ、七福神まつりを継承する地区でした。
かつては夏のかがり火祭りの際には、七福神を乗せたかがり火船団が荒島へ航行する姿が、夏の風物詩でした。

弁天様といえば、石巻市牡鹿半島の先っぽにある金華山には黄金山神社という弁天様を祀る神社があります。日本の「五弁天」や「東奥三霊場」に数えられるような大きな神社で、こちらも地域の海に関わる人達にとっては重要な信仰の対象となっていますね。

御神入れ

御神入れは、完成した新船に魂を吹き込む神事。この辺では少しなまって「ごすんいれ」と言われます。神棚に神様をお迎えする時の、あれみたいな感じでしょうか。

神事とは言っても、神主さんなどをお呼びするわけではなく、造船所と船主とでおこないます。普通は船大工が1人でこそっとやるんですが、弊社では船主さんにも来ていただいて、一緒にやるようにしています。
「どうだ立派な船ができただろ!」という造船所の気合いと「理想通りだぜさすがだな!」という船主さんの信頼の、取り交わしの儀式でもあると思っています。

船の神様っていうのは女神様で、なので海外の大きな客船なんかは女性の名前がついてますよね。クイーンエリザベスとか。
なのでお雛人形のような、こけしのような小さな人形をお宮に見立てた箱に入れて、白粉と紅と、鏡に櫛に、あと遊べるようになのかサイコロを一緒に入れて、船のどこかに納めます。
昔の木造船だった頃は船の先のところに穴を開けて入れたのですが、現在では船室に入れることも多いですね。

昔から夜中におこなわれるもので、船下ろしがある日は大安だったりするので、夜中日付をまたいで、大安になってから御神入れもしていました。現在では昼間におこなわれることが普通になってきていますね。

進水式

海に浮かべてみんなに新船を披露する“進水式”。船主の関係者に仲間の漁業者や地域の方々、造船所のメンバーやエンジンの技術者など、完成した船に関わる多くの人が集まります。

日の丸や船名旗、地域の方々から祝い旗として送られる大漁旗を掲げ、大音量で演歌を流し、湾内を周遊したり自分の浜へお披露目に行ったり、塩や酒で船を清め、海の神様にお参りもします。

私たち造船所のメンバーからすると、ちゃんと浮かぶだろうかとドキドキもしますが、とても晴れやかで感慨深い瞬間でもあります。

進水式のあとは、披露宴もおこなわれます。民宿などで、カラオケで演歌を歌いながら、みんなで飲めや歌えやのお祝いです。

こんなふうに、漁業も造船業も古くからある生業ですから、地域の神事やお祭り・文化ともとても関わりが深い産業なんですね。
伝統文化はだんだんと廃れてしまうものですが、今後もちゃんと引き継いで行けるよう志津川造船鉄工所も頑張っていきたいですね!