間近で船を見る機会もそんなに多くはないと思いますが、船ができるまでの工程は、日常生活の中ではまず目にすることはないと思います。
お客様と打ち合わせをして、設計をして、木型を造ってFRP作業して・・・と、海に浮かぶまでには実にたくさんの作業が行われているのです!
簡単な説明ですが、工程を紹介していきたいと思います。

こちらは船体ができるまでの前編です!

 

お客様と念入りな相談

まずは船主さんから、どんな船を作りたいかをなるべく細かく伺います。
どんな大きさの船か、どんな漁業をする船なのか、どんな設備がいるのか、どんなデザインや色が良いか。さらには船の右左どちらで作業をするのか、作業者の身長はどれくらいか…などもとても重要になってきます。

船主さんにとっては仕事道具であり、オトコのロマンであり、そして何よりとても高価な買い物ですから、マイホームを建てる時のように、たくさんのこだわりポイントがあるんですね。

 

設計

船主さんのご要望が把握できたら、予算内にいかにして収めるかも検討しつつ、実際の船の設計図を描いていきます。
最近はCADと言ってパソコンを使って図面を描いたりもできちゃいますが、当社ではフルオーダーメイドでの新造船なので、基本的に全く同じ船はありません。全て1からの設計図づくり!

設計の過程でも、何度も船主さんと相談をしたりしながら進めていきます。大筋が完成したら、お見積りやご契約の工程もこのあたりで行います。

 

現図の作成

いざ設計図が完成し、船主さんからGOをいただけたら、いよいよ建造に入っていきます!ここまでは社長と後継の祐太郎とで担当しますが、いよいよ従業員一同の出番です。

まずは「現図」という作業を行います。
お客様との打ち合わせに使う図面や提出図面というのは、A2~A3用紙サイズ、縮尺にすると1/30~1/100です。
そのまま原寸にすると、なめらかな流線ではないことがあります。
図面上で1mmの狂いでも実際の船の大きさにすると、3~10cmということになります。
(実際ここまで狂うことはまずありませんが・・・。)

図面をもとに、「なめらかな曲線になっているか=通りが良いか」を確認しながら、都度修正を行い、実際のサイズ(1/1スケール)で、図面を書くのが「現図」という作業です。
船というのは、曲線が多い構造物です。なめらかな曲線になっているかが非常に重要になります。
続いて、現図をもとに、船殻を作るための木型の製作となります。

 

 

 

木型の製作

昔は“船大工”と言われたように大工さんの仕事によく似ていますし、弊社にも住宅大工出身の社員が在籍しております。
下の写真ように木材を使って曲線を組み上げる技術はまさに造船所ならではの技術ですね。

これはあくまで、船体を作るための「型」なので、これが船体となるわけではないですよ。

型が完成したら、いよいよ船殻づくりとなります。

 

船殻の製作

型が完成したら、まずはゲルコートを塗布します。
通常、ゲルコートは漁船では白が多いですが、旅客船や釣り船、密漁監視船などは、白以外の色も多いですね。

その後、「船体積層」を行います。
ガラス繊維に樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)を塗布して、型に貼りつけ、脱泡を行っていく作業です。

「船体積層」作業は、弊社では唯一、従業員総出で行う作業です。
普段のチームワークが試されます。

 

余談ですが、総トン数20トン未満のいわゆる「小型船舶」に限って言えば、FRP製が主流です。
アルミの船もありますが、どうしてもアルミだと電蝕(海水によってだんだん腐ってくること)やランニングコスト(維持費)、ちょっとした修理はFRPの方が断然簡単等の観点から、FRP船の方が主流なのでしょう。

FRPとは“繊維強化プラスチック”のことで、樹脂の中にガラス繊維を混ぜ込むことで、軽いのに強い!を実現した素材です。FRPは多く使われていて、身の回りの身近なものだと浴槽や車のエアロ、はたまた人工衛星にまでも使われているんですよ。
かつては船といえば、木造船や鋼船でしたが、弊社では昭和40年代、2代目の頃に、宮城県で2番目といち早くこの素材を導入しました。

 

内構造部材の取付

強度を保つための、部材を製作・取付していきます。
人間でいう、全身の骨といったところでしょうか。

内構造部材が入って、船殻が歪み・ねじれ等がない状態になったら、いよいよ型から抜く作業「脱型」です。
ここでようやく、船の外見が見えるようになります。

その後、デッキ(上甲板(いわゆる床))や、ブリッジ(船橋、上部構造部(操船室など部屋になっている場所))などを取り付けていきます。

ここまでで、この通りすっかり船らしい形になりました!
しかしこれではまだ、海に浮かぶただの空き箱。このあとここに機械類や設備をつけていく艤装(ぎそう)をおこなって完成に向かっていくのですが、続きは“船ができるまで(後編)”にて!